
一人で飛行機に乗ったのは初めてだった。
中学を卒業し、引きこもりだしたばかりの頃、
なぜか飛行機の音がする度に怖くなり、
頭から布団をかぶって震えていた。
その後、何度か家族と乗る機会はあったものの、
公園のブランコですら気持ち悪くなるほど
乗り物に酔いやすかった自分には、かなりしんどかった。
そんな物に、一人で乗った。乗れた。
が、あいにく座席は外の景色が全く見えない位置。
おまけに、斜め前にいた赤ん坊が泣き出してしまった。
赤ん坊の泣き声は、飛行機の音よりも苦手だった。
人生最悪の日の記憶が甦り、気が狂いそうになるからだ。
電車内であれば、途中で降りたり車両を移ったりもできる。
無論、ここでは不可能。思わず立ち上がろうとするも、
両隣りには、しかめっ面で新聞を広げているスーツ姿の男性。
仕方なく、目の前にあったイヤフォンを手に取り、
プラグを椅子に差し込んで、音量を上げた。
チャンネルを邦楽番組に合わせてみると、
流れてきたのは、YUIの『Rolling star』。
かつてのサポートメンバーが携わっているアーティストの一人だ。
嬉しいような、寂しいような、複雑な心境に。
2001年から4年間、一緒にライヴや音源制作を行なっていた兄やん達。
今では、全員が揃って顔を合わすこともなくなり、
それぞれ新たな場所で活躍している。
歌詞にできそうなフレーズが、いくつも浮かんできた。
やがて赤ん坊も泣き止み、執筆に集中。
13歳の頃に生まれたメロディー(別の歌詞でストックしてあった)に、
なるべく簡単な言葉を選んで乗せ、最後に『岐路』と名付けた。
そうこうしているうちに、目的地である宮崎空港に到着。
話題の県知事でも近くにいるのか、詰めかけていた多数の報道陣。
少し立ち止まってみると、読売巨人軍の選手を紹介するアナウンス。
どうやら毎年恒例のキャンプのためにやって来たようだ。
亡くなった祖母がポスターやカレンダーを持っていたほど好きだった、
高橋由伸選手の名も呼ばれていた。背伸びするも全く見えず、
ちょっぴり気を落としつつ、待ち合わせ場所へと急いだ。
続きは、気が向いたら。
