中2になる頃には、すっかり百合子のグループの一員となっていた。
百合子の傍にいると、毎日がハラハラドキドキの連続だった。
放課後に学校に残り、菓子類を頬張りながら語らうなんてのはざらで、
お兄ちゃんのいる子の家に集まり、無断でアダルトビデオを鑑賞したり、
みんなでテレクラに電話をかけ、相手の男にオナニーをさせて遊んだり、
別々のクラスながら、同じ時間に不調を訴え、保健室で落ち合い、
まんまと一緒に早退させてもらった上、家に帰らずブラブラしたり、
仮病で見学を申し出ておいて、ジャージを着たままプールにダイヴしたり、
弱そうな先輩を待ち伏せし、女教師の時と同様に集団で罵倒したり、
それに飽き足らず、怖めの先輩がタムロっている所に、
名指しで「バカ」だの「ブス」だの書いた紙を投げ込み、
案の定キレられ追っかけ回されたり、手に負えなくなった先輩らが、
卒業生(高校生)達に裁きを依頼し、大騒動になったり……
いずれにしても、主導権は、百合子の手の中に安住していた。
それは、物心ついた頃から支配欲の強かったコイツにとっては、
決して気分のいい状況ではなかった。
しかし、百合子には、全くと言っていいほど歯が立たなかった。
百合子はとにかく、頭の回転が早く、恐れ知らずで、
外見的にも、肌や髪がものすごく綺麗だったりで、
この子は絶対に芸能人になるだろうと思わせるようなオーラを放っていた。
周囲は百合子を見かけるなり、「カワイイ」などと煽てまくり、
百合子自身が戸惑ってしまうくらいだった。
あの当時、校内で百合子の存在を知らぬ者はいなかったんじゃなかろうか。
また、百合子はコイツ以上に気が短く、少しでも頭にきた相手がいると、
「シメんべ!」と、すぐに仲間を誘った。
コイツも何度か立ち会うことになったのだが、
ある日の百合子達の行為には、愕然とするものがあった。
一人の女の子相手に、三人がかりで、
理由もろくに説明しないまま、殴る蹴るの暴行を加えだしたのだ。
話で解決するつもりでいたコイツの意志を遮るように、
「とにかくムカつくんだよ!」という声が飛び、
コイツも思わず、蹴りを入れてしまった。最低だ。
仲間の大半は、逆らったら自分がヤバいと察し、
百合子に賛同しているのだと気付いた。情けなかった。
毎日のように、相談室の名を借りた取調室へと呼ばれた。
それぞれの家まで教師達が押しかけてきたこともあった。
ただ、百合子はその度に、
全ては自分が率先してやったこと、責任は自分にあると、
まるで、怒られるのは自分一人でいいかのような発言を繰り返していた。
実際、百合子はほぼ無関係であった問題まで、
百合子が処理を引き受ける時もあった。コイツら仲間は、
そんな百合子に甘えて、楽しむだけ楽しんでは、肝心な所で逃げた。
コイツは反省すると同時に、この子なら信頼できる、
力になりたい、そう思うようになった。
その日もいつものように、仲間と廊下に座り込んでいた。
そしていつものように、百合子が口を開いた。
「あたし昨日、レイプされかかってる女の人見ちゃった!」
──百合子は笑顔だった。
百合子だけじゃない、そこにいた誰もが、笑顔だった。
コイツもとっさに微笑んだ。
<誰も知らないんだもの、誰にも話してないんだもの、しょうがないよ。
でももう、ここにいる誰にも…>
そこを偶然、英治が通りかかった。
「何話してんの?」
コイツは縋るような、祈るような眼で、英治の顔を見上げた。
「マジで?」
英治は、百合子の話を聞くと、笑った。微笑んでいた……
2003年01月05日
偽装
posted by コイツ at 00:00| U-16【回顧録】2002年12月〜2003年06月に連載。
