受験シーズン真っ只中、コイツは入院していた。
ごく少人数ではあるが、2学期の頃から、「いないと寂しい」
「学校来て」などという電話をよこしてくるようになった友達がいた。
「ツライことあったら、俺んち電話してよ」
そう言ってくれたのは、小学校時代からの友人であり、
英治とも仲の良かった男の子・寿明(仮名)だった。
入院中も、寿明から自宅に電話が来ていると聞いたコイツは、
病院から連絡を取ってみた。
「英治が、〈アイツなんで学校来ないの?〉って言ってたよ。
で、入院してんだってって言ったら、また〈なんで?〉って。
心配してるんじゃない?」
「ウソ…」
そんなのとても信じがたかった。
クラスメイトの女の子達も、英治が、一日に一度はうちのクラスへ来て、
教室内をザッと見回して帰って行くと教えてくれたが、
コイツ自身は、英治に気に掛けてもらってるようなことを言われた例がなく、
疑う方が、ずっとラクだった。
3年の教室は2階にあり、どの教室からも出られるベランダがあった。
退院し、久々に登校した日の放課後、
コイツはそこから、誰もいなくなった自分のクラスの教室を眺めていた。
すると、全開になっていたドアから、英治が顏を覗かせた。
その視線の先には、コイツの席があった。
そして英治は、コイツの姿に気付くことなく去って行った。
コイツはその時、初めて英治の切なげな表情を見た。
<私、全然わかってないかも。オマエのこと、全然…>
同好会は、卒業式の数日前に行われる、
お別れ会のステージにも立てることになった。
コイツは、入院していた際、自分に無断で居場所を聞き出し、
何の予告もなく見舞いに来た博美を、とっさに追い返してしまい、
しばらくして、ものすごく後悔した。
何が何でも、もう一度一緒にステージに立ちたくて、
企画書を用意し、複数の教師に頭を下げ、どうにかそこまで漕ぎ着けた。
その甲斐もあって、メンバーは文化祭の時よりも増え、
残り少ない中学校生活を、存分に楽しむことができた。
そう言えば、同好会の顧問を引き受けてくれたのは、
中1の頃に土下座をさせてしまった、あの女教師だった。
高校へ行かないという決意と、
それを了承してくれた両親のことを書いた手紙を読んで、
ぽろぽろ涙を流してくれた教師もいたし、
コイツの通学用リュックの中に、水鉄砲だけしか入っていなかったのを見て、
呆れながらも微笑んでくれた教師もいた。
イヤな物事があって、首を横に振って、
それでこそ視界に入った宝物が、いくつもあった。
2003年05月28日
側面
posted by コイツ at 00:00| U-16【回顧録】2002年12月〜2003年06月に連載。
