永遠など有り得ないのだと、確信した。
「私やっぱ、あのまま殺された方が良かったかもしれない。
じゃなきゃ、自殺するべきだった」
「何言ってんの」
「死んじゃえば、もうそれ以上、悲しむことも悔やむこともなかったわけだし…」
「や、なんかあるよ」
「イイこと?」
「うん」
「保証できる?」
「うん」
「ただのカンなんでしょ?」
「いや、それが当たるんだな」
いつかの英治とのやりとりが、頭の中を何往復したことだろう。
祈ることしかできない日々は、とてもとても長く感じた。
「またいつでも会えるよ」
最後に見せてくれた笑顔が、握った手の暖かさが、大好きなあの声が、
何よりも遠くへ行ってしまいそうな感覚。
それに逆らうように、鮮やかさを増す思い出達。
四六時中、神経が張り詰め、何度も呼吸が乱れた。
そんなコイツのもとに届けられたのは、朗報だった。
手術は成功した。英治は一命を取り留めた。少しずつ回復へと向かって行く英治。
だが、コイツはそんな英治に、一度も会いに行こうとしなかった。
危機的な状況を脱したと判っただけで安堵し、全身の力が抜け、
その後の英治の苦しみなど、想像すらしなかった。
だいぶ後になって知ったことだが、
英治はこの時、吊るされた自らの足を見つめながら、初めて、
「死ねば良かった」という思いを味わっていた。
甦る恐怖、走る激痛、そして、
家族に迷惑をかけてしまったという罪の意識から解放されたくて…
典型的な熱しやすく冷めやすいタイプだった英治は、
入学早々に付き合いだした彼女とは、すでに別れていた。
自分から惚れ込んでおいて、あまり話さなくなって離れるという、
百合子の時と同じような結末だった。
度々見舞いに行っていた寿明に、「寂しい」と漏らしてしまうほど、
英治は弱っていた。でも、コイツは会いに行かなかった。
ただ、改めて、一刻も早く、英治に頼らなくても大丈夫な自分にならねばと思った。
このまま英治が必要な自分でいてはダメだと。
これから我が身に起こりうる、“イイこと”を掴めるまでは、それまでは、
会ってはいけないような気さえしていた。
英治に会いたい自分こそが、英治を愛おしむ自分こそが、
真っ暗な闇の中、一筋の光となっていた日々は、もう、終わっていた。
2005年09月15日
予兆
posted by コイツ at 00:00| U-17【回顧録】2005年08〜11月に連載。
